上本竜平 インタビュー (2008/9)


―AAPAの活動を始めたのは、いつ頃ですか? きっかけなど、できるだけ具体的に教えてください。

上本 自分は99年に大学に入学して演劇サークルに入るところから舞台を始めて、それからコンテンポラリーダンスを知って興味を持つようになったんですが、「AAPA」として活動を始めたのは大学を卒業してからで、2004年夏の「茅ヶ崎戯曲」が最初です。

ただAAPA的な活動は、その1年前の2003年の夏に、同じ海水浴場の砂浜で始めました。劇場ではない場所で舞台活動を始めたきっかけは、周りに舞台系の知り合いが多くなかったので、劇場ではない場所でやる方が自分には自然だったからだと思います。あとは、大学で触れた研究を通じて、いま自分たちが生活している環境(都市景観)や、日常生活の個人的な記憶を何かしらの形で記録する方法に興味があったので、その影響もあると思います。

―その、「AAPA的な活動」とは、具体的にはどんなことですか? また、そういった活動内容は、どういう経緯で考えついたのですか?

上本 話すと長いですが、大学で文化人類学が専門の渡辺靖さんのゼミに入っていて、国内外の文化や地域、インターネットなど、様々なコミュニティに関心を持つ仲間と話すことが多かったので、そういったことが「AAPA的な活動」の始まりだったと思います。

具体的には、2003年の夏にゼミの後輩から「大学の近くの海水浴場(サザンビーチちがさき)で市民参加的なイベントをやるから手伝ってほしい」と声がかかり、色々なジャンルのワークショップやパフォーマンスを、自分たちで砂浜に作った仮設のドームを拠点に、ひたすらやりました。そしてそれが終わった後、こういったひとつの場所で色々やることを、「舞台」を軸に考えてみようと思い、2004年に「AAPA(Away At Performing Arts)」という名前をつけて友人と活動を始めました。なので舞台は、ダンスならダンスだけ、音楽なら音楽だけ、というものではなくて、もっと広く・多くのことが、必要に応じて一緒に活動できるジャンル、という考えでいます。

―AAPAの作品には、ダンス、DJ、美術、建築など様々な要素がありますが、各メンバーとのクリエーションはどのような形で行っているのですか? その方法で行う理由についても、教えてください。

上本 今の状況について言うと、毎回の公演場所や作品コンセプトの設定は自分がしますが、個々のジャンルの創作や、それに必要な準備は、基本的にそれぞれで進めていく形を取っています。自分が演出するときは、どれも全体ではなく、部分として考えています。

なのでAAPAでは、全体でひとつ、という考えでは動いてません。たとえば、ダンスでこういうフレーズがあるから、それにあわせて音を作るということはしていなくて、情報の公開・共有は別として、基本的にはそれぞれ別々に作っていく。

それは、隣が実際に何を出してくるのか、何も出てこないのか、わからない状況でそれぞれが作っていくことを意味しているので、リスクがあると思う。それでもできるのは、演者が即興性や可変性に強い面を持っているからこそだと思います。なので、毎回同じような環境で活動するのではなく、わかりやすく言えば劇場外で活動することで、毎回違った環境で舞台作りに取り組むといった、個々の柔軟性のようなものをより高めるためのハードルをあえて用意することが、必要になっています。いつも新鮮さをもって取り組む姿勢を育てることが、大事なんだと思います。

―今、興味があることは何ですか。または、今後やってみたいことなどがあれば、教えてください。

上本 3、4年前から、空間的に「ガソリンスタンド」になんかひかれる、と思っていたら、最近になってガソリンの値段が急に高くなったということがあったので、単純に日常的に目の前にあるものへの空間的な意識であっても、その背景にある離れた社会的な事柄に繋がっていく、ということに興味があります。

最近の作品(「PAPERGATE」)のなかで「森」という言葉が出てきて、それなら次は森に行ってみようとなったり、横浜で活動を続けてきたことで「東京近郊」という言葉を意識するようになったりしているので、実際に様々な現場に行って、舞台の創作・上演に繋げていきたいと思っています。

―舞台上に「森」を作るとか「東京近郊」を再現するという方法を取らずに、実際に森や東京近郊の駅前など、「その場所」で舞台を作るのは、どのような意図があるのですか? または、どのような違いがあると考えますか?

上本 単純に、「実際の場所を舞台で再現すること」には興味がないからだと思います。大学時代の興味と繋がるかもしれませんが、自分は「森」や「東京近郊」を、複数のひとが共有するイメージとして見ています。作品を作り始めるときに頭に浮かぶのは、ある特定の場所ではなく、あくまでイメージです。舞台を上演する現実の場所は、自分にとってイメージの外側にあるものなので、イメージをもとに舞台を作った後に、関連する実際の場所への興味が生まれてくる、という順番です。

逆に言うと、普段の生活から舞台の活動を切り離して考えたとき、そういった外部にあるものへの興味は、自分にはほとんどないんだと思います。舞台の活動を通じて想像が重なっていくことで、いま自分がいる場所にはない「外側」への興味が生まれて、行ってみようと思う。なので、現場の実態を取材して記録しようとするドキュメンタリー的な考えで、現場に行って舞台の創作を始めているわけではないですね。

自分自身、どこか色々と行くのが好きというわけでもなく、旅行にしても、縁があったり必要に迫られたりして行く方が自然です。どちらかと言えば、その場で寝ていて見ている夢が気になるタイプなので、AAPAの舞台も、「その場で見る夢」という感じでいます。AAPAの舞台は、背景が砂浜だったり駅前だったり屋上から見える景色だったりするわけですが、それを舞台に必要なセットとして考えているのではなく、舞台によって起きること通じて、目の前にあるそういった日常の景色が、逆にフィクションとして浮かんできたら面白いと考えています。

―不思議な感覚ですね。現時点での、AAPAとして一番大きな目標は何ですか?

上本 AAPAでは、日常の生活環境の中で舞台を上演していくことで、自分たちなりに、舞台を日常の中で起きることとして位置づけていく経験を重ねていきたいと思っています。ただこれからは、その方向性は引き続き大事にしつつも、舞台を日常の中に持ち込むアプローチだけではなく、日常での感覚を舞台作品の創作に繋げることも、大事にしたいと思っています。

その中で、演者としての身体を使ってなにをしていくか、ということをもちろん考えると思うのですが、同時に誰もが抱えている日常の身体が、常に様々な環境を通過して「動いて」いることに、見ているひとの意識が向くような仕掛けを考えていくことができれば、と思っています。また、そういった意識でダンスを見ると、抽象的に見える動きも、持つ、待つ、回る、移動するといった、日常の行為と関係した動きとして見えてくる瞬間に、立ち会うことができるように思います。

そして、そうした瞬間をとらえる感性によって、自分の外部にある環境の存在が見えてきて、実際に環境が変わる感覚を想像するきっかけを生み出す場に舞台がなれば、もっと身近なものとして、舞台を観ることが使われていく気がします。そのあたりがこれからの、AAPAの目標になる気がしています。

―壮大な構想、ありがとうございます。今後の活動を、楽しみにしています。

(インタビュー: 山本ゆの)


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