永井美里 永井 美里 Minori NAGAI
神奈川県出身。6歳よりクラシックバレエを学ぶ。高校入学後、心と身体の関係、ダンスのもつコミュニケーション能力などに興味を持つ。2006年にロンドン・ミドルセックス大学ダンス学部を卒業。大学在学中にコンテンポラリーダンス及び振付を学び、過去4作品を創作・発表。帰国後、「アウェイ街区」(横浜・ZAIM)にて『Living room』を発表。07年3月3日・4日にはベーリック・ホール(横浜・山手)に場所を移しての改訂版『巡演の時間 その1』(永井美里 『Living room』)を上演。
















永井美里


















永井美里
『Living room』



















永井美里


















永井美里
『巡演の時間 その1』
(永井美里 『Living room』)


















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永井美里
撮影地:ZAIM別館
永井美里 直前コメント+Q&A

――ダンスとの出会いを教えてください。
永井  近所の友達がバレエを習っていたので私もやってみたくなり、小学校に入る少し前から地元にあるバレエ教室に通い始めました。

――コンテンポラリー(と呼ばれる)ダンスの存在を知ったきっかけ、踊るようになったきっかけは?
永井  高校生になり踊りに夢中になっていくのと同時に、バレエに対する違和感ももつようになり、自分の身体をもっとうまくいかせるダンスがあるのではないかと、他のダンスジャンルに興味を抱き始めました。ちょうど海外へ留学に行きたいという漠然とした想いもふくらみ、ダンス・留学というキーワードで情報収集をしていたところ、イギリスの大学のダンス学部では幅広いダンスに関する知識・経験を学べるとわかりました。コンテンポラリーダンスに関する知識はほとんどないまま、大学に入学し、そこで出会ったのがコンテンポラリーダンスだったのです。

――高校でダンスのコミュニケーションに興味をもったとのことですが、興味をもつようになった理由は?
永井  バレエと向き合う中で、ダンスが自分に与えてくれているものの大きさを実感していました。自分の身体と向き合うこと、みんなと一つのものをつくっていくということなど、自分がダンスと一緒に人として成長してきたんだなという実感が高校生になったときに急にわいてきて。それで、ダンスには何か身体を動かすこと以上の大きなパワーがあるって思いだしたんです。留学生活中は、言葉の壁があった分、ダンスをとおしてのコミュニケーションというのを実体験として感じることができました。言葉で表現しきれない分、身体で感じること、身体で伝えること、目を使って相手を観察することなど、言葉をつかわずに身体一つで表現するっていうダンスの原点を学べた気がしました。そういう体験を経て、身体ってこんなにおしゃべりなんだってわかるようになりました。

――ダンスのコミュニケーションと日常生活におけるコミュニケーションの違いや共通点、関係性についてどのようなことを考えていますか?
永井  難しい質問です。。簡単にまとめてしまうと、違いは“ダンスは非言語”、“日常は言葉のコミュニケーション”ということでしょうか。共通点は必ずキャッチボールがあるということ。常に投げる側と受け取る側の存在があります。うまく言葉にできるかわかりませんが、ダンスのもつコミュニケーションというのはとても直接的、感覚的、本能的なものだと思います。日常のコミュニケーションの中では、言葉や物が、その核心の部分を覆い隠してしまうことがありますが、ダンスでは身体一つで相手と向き合わなければいけません。身体は嘘をつかないので、全てがさらけ出されてしまうのです。同じ振りをもらっても違う人が踊ればその人のニュアンスが出てきます。その身体そのものが発する信号が、ダンスのもつコミュニケーション能力だと考えています。
また、ダンスには日常のコミュニケーションの枠を乗り越えてしまう不思議な力があると感じます。例えば日常生活の中である人と手をつなぐとか身体に触れるというのは、時間がかかるものですよね。でもダンスならば、一緒に踊る誰かと手を取り合ったり、身体をあわせたりということを数時間のダンスクラスの中で自然に行うことができる。クラスが終わった後には、始まる前には見知らぬ人どうしだったとは思えない親密感、親近感が生まれる。私が先ほどいった言語の壁とかもそうですが、日常にあるコミュニケーションの壁をぬぎさってくれるんです。

――ロンドン行きを選んだ理由は?
永井  留学先をロンドンにしたことへの深い理由はありませんでした。留学をするなら、英語圏が良いと思い、アメリカかイギリスかといったら私は絶対イギリスのほうが合うだろうと思ったんです。

――ロンドンでは、どのような学校生活を送っていましたか?
永井  ダンス漬けでした(笑)。大学だったので、講義や小論文の課題もあったから大変でしたね。朝から実技を2クラス受け、講義を一つ受講。空き時間に図書館で課題をすすめ、学期末の公演にむけて創作したり、友達の作品のリハーサルをしたり。それは遅いときは夜9時まで続きました。時間があれば友達と一緒にご飯を食べたり、映画を見たり、おしゃべりをしたり、ロンドン市内にダンスを観に行ったり、買い物に行ったり、楽しい時間も過ごしました。今振り返ると、あんな風にダンスに集中できる環境にいられたことは本当に贅沢だったなと思います。

――(学生として/ダンサーとして/観客として)ロンドンと日本のダンス事情の違いについてなど、思ったこと、感じたことを教えてください。
永井  ロンドンではダンスと人々の生活がもう少し一体化している感じがしました。マネージメントなどの体系が整っていて、ダンサーの育成システムもしっかりしている。ダンサーが学校や地域へ踏み込んでいって、幅広い人たちがダンスを体験する機会があり、いろんな人がダンスを体験できる機会が与えられているからこそ、さまざまな人が劇場へダンスを観に来ていたのだと思います。劇場やスタジオの色もわかりやすく、情報がうまく流通していて、ここに行けばこういうクラスが受けられる、あそこに行けばどんな公演を観られるといったことも、だいたいありました。私は日本に帰国して半年なので、わからないだけかもしれませんが、情報が拡散している印象をうけました。最近になって小劇場があちこちにあるその多さにびっくりしていますが、ダンサーの人数も、劇場もこんなにあるのに、どこかアンダーグラウンドなイメージがある。ソロで活動している人が多いのも日本の特徴だという気がします。

――ロンドンのプラットフォームでダンスパフォーマンスを行ったそうですが、それはどのような企画・作品だったのでしょう?
永井  ロンドンのキングスクロスの駅で友達のプロジェクトに参加してゲリラパフォーマンスをしました(笑)。これはDiscoquetheというアートグループが企画していたもので、グループのメンバーがロンドンのキングスクロス駅からエジンバラ行きの電車に乗り、途中の駅各所で異なるアーティストの作品を観てまわり(ダンスに限らず。実際にこのグループでダンスをする人はいませんでした)、最後の駅に着いたときに、その旅路での想いや経験をインスピレーションにして作品を作る・書き上げるというプロジェクトがあり、私の友達であるマイアがロンドンにいる私たちが駅でパフォーマンスをするのはどうかとメールをしたところから始まりました。パフォーマンスは電車の中から興味深そうに観ている人、まったく無視する人、変な目で見ている人、踊っている私達の間をトランクを引っぱってわが道を突き進む人、さまざまで面白かったです(笑)。この企画のアイディアはとても素敵だと思いましたね。

――イスラエル、韓国の振付家による振付作品を踊ったそうですが、これらの経験を経てどのようなことを感じたり考えたりしましたか?
永井  国が違っていてもダンスをするということに壁はないのだなということ。2人ともまったく違う作品、世界観だったので、いい勉強になりました。イスラエルの振付家の作品はフォームやラインを大事にするどちらかというと静かな作品で、韓国の振付家の方は感情やストーリーを大切にする作品でした。韓国の作品は、韓国と日本の戦時中の慰安婦問題をテーマにしたセンシティブな作品だったので、踊り以外に歴史や社会の勉強にもなりました。公演に、実際に慰安婦だったおばあさんたちが観に来てくれて対面したりと、自分の中でとても大きな意味をもつ作品になりましたね。

――作品をつくる際、振付はどのように行っていますか?
永井  作品によって多少は違いますが、まず自分が取り組みたい広範なテーマからキーワードを絞ります。写真や文章、言葉、絵、音楽など、インスピレーションを与えてくれるものを探して、それを反すうしながら身体を動かしていく。それである程度のモチーフとなる動きをつくって、構成をしていきます。自分で動きをつくらないで、ダンサーにイメージを伝えていろいろ動いてもらいながらつくっていくこともします。

――今回はZAIM屋上での公演。屋上という場所で踊ることについて、どう思いますか?
永井  初めてなのでとても楽しみです。基本的に高い場所は大好きなので、あまり恐怖感はないですね。開放感がありすぎて、われを忘れて飛んでいってしまうかもしれません(笑)。寒さだけが気がかりですが。。。雨が降らないことを願っています。月とか出ていたら素敵だなぁと思います。

――他に踊ってみたい場所、シチュエーションなどはありますか?
永井  野外で踊りたいですね。これから暖かくなるし。自然に近い場所で踊りたいです。海とか川とか草原とか。

――今回の公演には、モチーフとしてある絵画作品のイメージが表現されますが、あなたの好きな絵(画家)は?
永井  モネが好きです。モネの優しい色使いや繊細な表現が好きです。

――好きな色は?
永井  気分によって変わるのですが、最近好きなのは緑っぽい色。草原っぽい色。

――座右の銘を教えてください。
永井  A body has intelligence itself (直訳すると身体は知恵をもっているということ。スキナー・リリースというテクニッククラスで先生がいつもいっていた言葉。身体の声を聴くように私たちに促すときよくいっていました。)

――お気に入りの寿司ネタは? サンドイッチの中身は?
永井  炙りトロサーモン。私のバイト先の人気商品です。アナゴ・いくら。サンドイッチはBLT!

――お忙しい中、ありがとうございました!


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