上本竜平が作・演出・振付をするAAPAのクリエーションは、
東京近郊の環境に根付いた「からだ」「ことば」「もの」を、
ダンスパフォーマンスに重ねあわせる作品の創作を特徴とします。
コロナの感染拡大により休業要請を受けてスタジオを閉じ、遠隔で始めたオンラインクラス。
すべてが画面の内側で、からだもすべては見えないが、話はできる。
距離があっても「聞こえる」関係なら、互いに閉じても離れてもいない。画面でつながりながら無意識に、そんな安心を抱いていた。ただ、それが、これまでと変わらず生まれてくる「ふるえ」が、内側に見えていても「聞こえない」のだとすれば・・・
『 窓の外から 見えていても 聞こえない 』
この状況を舞台に、「青い鳥」で知られるメーテルリンクによって書かれた1894年出版の戯曲『Interior』を、「触れる」ことで眼に見えない内側の動きを聞いていくコンタクト・インプロビゼーション (CI) を通じて描いた作品。
公演詳細:https://note.com/aapa/n/n5cc239cddbd3
コロナ禍での感染防止対策を踏まえたトライアル企画として、北千住の大小異なる会場で、客席限定 5 席で行う『①ミニマムショーイング』と、客席(198 席)を収容可能な広い空間での『②映像撮影見学会』を実施。2作品の創作(新作と、過去作品の再創作)を通じて、会場での LIVE と別日に記録された映像を行き来しながら、それぞれに触れる機会を広げる試みを行った。
公演詳細:https://note.com/aapa/n/nfd44011ed9ee
関連動画:
『すむ』(ボディ・ペインティング ver.)
『すむ』(ボディ・ペインティング ver.)メイキング映像
「まちづクリエイティブ」が管理する空き物件での滞在制作(vol.1/vol.2)を通じ、上本・永井が暮らす松戸駅周辺のフィールドワークをもとに、身のまわりの様々なとなりあう関係に、身体的、地理的、歴史的に触れていくダンス/シアター作品として初演。
(vol.3) 2017 年 9 月 「演劇」の演出家との協働創作
会場:百景社アトリエ(茨城)
(vol.4) 2018 年 4 月 作品内で触れる神社や言い伝えを観客と実際に巡り「占い」を行う
会場:松戸駅周辺
(vol.5) 2018 年 5 月 「武術」「歌/声」「サーカス/ジャグリング」「仮面」のゲストと毎回異なる会場の組み合わせによる上演
会場:北千住駅周辺
作者(上本)の祖父が、日中戦争を契機に日本に帰国するまでの幼少期を過ごしたマレーシア(現シンガポール)の思い出話をもとに創作したダンス/シアター作品。
2014 年に元カップルホテルの PARDAISE STUDIO(千葉県松戸市)で初演をした後、2015 年に百景社アトリエ(茨城県土浦市)、2016 年に Théâtre de Belleville(三重県津市)に滞在し、再創作・上演を行う。
ダンサーとジャグラーのデュオ作品。
2015年8月に神楽坂セッションハウス(東京)を会場に行われたTheater Juggling Stream(TJS)で初演。その後、新たなシーンを追加し、2016年1月に日の出町団地約スタジオにて再創作し、上演した。
港湾倉庫時代の姿をとどめる天井高5mの巨大なコンクリート打放の空間に、むき出しの木材で構成された美術家・川俣正さんの作品が設置されたBankART NYKの1階ホールで上演した作品。
コンテンポラリーダンス、オブジェクト、ジャグリング、そしてミュージシャンの生演奏が重なりあう。
チラシテキストより↓
遠く離れた森の入口。水辺のふちで、釣りをする男がひとり。静かに視線をそそぐ水面の先に、道に迷った男女がふたり。それぞれが一緒に、遠くでゆっくりと跳ねる、光る魚を見る。泳ぐ魚が陸にあがるとき、不思議な釣りの話がはじまる。
画家・鈴木省三の絵画と、画家本人との対話をもとに、AAPAの永井美里(振付・出演)と上本竜平(構成・演出)、音楽家のsylian rue(作曲)が共作する形で創作したダンス作品。
2011年8月にThe Artcomplex Center of Tokyo (東京/四谷三丁目)で行われた鈴木省三個展で初演を行い、2012年2月にはセッションハウス(東京/神楽坂)で音楽家4名の生演奏を加える形で再演。
現代に暮らす自分たちのまわりにあふれている「終わりのないように見えるもの」、「何も変わらないように思えること」にも、本当はある、『終わりの予兆』を描いた作品。
変わることのないように思える自分の身体、衣服、平行線の会話。確かに日々終わりへと近づいているはずだが、いつからそれは始まり、いつ終わりを迎えるのかわからない。日常の物たちの連なり、日々の行為に混ざり続けるダンス、ひとりの男が舞台上と映像を通じて語り続ける言葉、その並列から生じる「終わりがない」という思い。そのなかで、「今・この場所」の劇場・舞台がもつ「室内で小動物(人)を飼う」構造をたどることで、確実に日々「終わり」に近づいていることを感じた、あの日の記憶が、男の心の底に浮かんでくる。
JCDN主催の「踊りに行くぜ!!Ⅱ」の企画で、鳥取の「鳥の劇場」で2010年秋に1週間の滞在制作を行い、AAPAでは初の劇場ツアーとして、2011年に国内4都市(鳥取、福岡、伊丹、東京)で上演した。
つくば市北条にある、歴史的な価値を残す昭和の実験住宅、「旧矢中邸(現・矢中の杜)」。ふとした縁からこの場所と出会ったAAPAが、ただ古いものを保存するというだけではなく、そこに新しい価値を生み出していこうとしている「矢中の杜」に滞在し、「終わり」と「始まり」の間にある「空白(ブランク)」の質感を確かめる行為として、舞台公演を創作・上演する企画として行われました。上演では、ダンサー1名が観客を引き連れ、ガイドとして矢中邸を案内するのにあわせ、各部屋・屋外の空間で出会う他のダンサーとのダンスを見ていく、移動式のパフォーマンスの形を取りました。最後の場面では、観客も参加しての「終わり」を告げる儀式を、邸宅の庭で行いました。
横浜市の初黄・日ノ出町地区の京急線高架下を中心とした地域で、 2009年よりアートによるまちづくりをテーマに活動を展開するNPO法人(黄金町エリアマネジメントセンター)の主催イベント「黄金町バザール」の一環として創作・上演。鉄道の高架下に位置する日ノ出スタジオ2階の回廊部分に広がる空間の特性に触発された作品。
舞台に当たる空間を日ノ出スタジオの屋根の上としたため、高架下までの高さが150cm程度という制約があり、ダンサーは舞台の上で真っ直ぐ立つことはできません。しかしその限られた空間の中で、真っ直ぐには立てなくても様々な形で動き続ける様が、「真っ直ぐ立つことができない」ということ以上に、「立つ」ことの実態を浮かび上がらすと考えました。立つには適していない場所にも関わらず、そこに立ち続ける姿によって、『自由な姿』のイメージを新たにしていくきっかけとなることを目指し、上演を行った。
倉庫として使用されていた空間が2つ同じサイズで並んでいる特異な場所を会場に、「同じサイズの空間・同じダンス(振付)・同じ音」の条件のなか、演出の違いにより生み出される変化を主題とした作品。
最初の会場Aは、空間を仕切る物体や観客席を設けず、観客は何もないシンプルな空間で、自由に見る位置を決めて舞台を眺めることができるように美術は平面(床面)のみとし、音・照明は4人のダンサーが会場空間をそれぞれ並行して踊っていく。続く会場Bは、通常の劇場空間同様に、ひな壇型の客席と緞帳に見立てた大きな布が客席前に垂れ下がっている形で開演し、ダンスの進行とあわせてその布が徐々に舞台後方に引かれ、舞台空間が姿を現し、Aで床面に描かれていたグラフィックがBでは実際の立体物として舞台上に登場する流れとした。
2009年3月から8月にかけて3回に渡り、異なる野外会場での無料公演という形式のもと、創作・上演の試みを行った作品シリーズ。
向こう側の景色が透けて見える「薄い膜(cover)」と最低限の支柱のみを基本的な空間構成物とし、スタッフとダンサーの介入によって形や表情を変化させていく舞台空間と、上演内容(ダンス)の進行を、相互に独立した形で展開させていくことを、一貫したルールとしました。このことにより、現実の空間に直接的な変化を与える物体としての「薄い膜」と、フィクションとして登場するダンスが風景のなかに「茂み(cover)」として現れてくる様が、同等に認識される瞬間を探ることを狙った。
また『cover』シリーズの3作目を行った、淡路島の「CEF南あわじウィンドファーム」では、現地を訪れた風力発電施設の見学希望者に向けて、敷地内のガイドを行うのと同時にパフォーマンスを上演し、「薄い膜」を物理的な存在としてだけではなく、観客/ガイド(スタッフ)/ダンサーの間に存在する『身体(パフォーマンス)性』を「薄い膜」として捉えることを試みた。
「G-net TOKYO(東京在住の岐阜県出身者で構成されたボランティアグループ)」と協働し、「アサヒ・アートフェスティバル2008」参加企画として創作・上演した作品。
2008年の4月から8月にかけて、人工林での間伐体験や森林関係者への取材、岐阜山間部での公演をフィールドワークとして実施。そこでの経験をもとに、企画テーマの「森と人(都市)との距離」の解釈を行い、最終的に「点と点を結ぶ見えないラインを移動する」ことをモチーフとして、作品創作に取り組む。2008年11月アサヒ・アートスクエアにて作品上演とあわせ、G-netTOKYOによる森林に関する調査活動の展示発表、林業の専門家とのトークセッションが行った。
「現代の20代の、東京近郊から都心に通うライフスタイル」をテーマにした作品。2007年の秋にZAIM本館地下で『Papergate』を初演。その後、「旧東急東横線桜木町駅舎」に会場を移し新たな空間要素をもとに『PAPERGATE』として再創作。その後も岐阜県郡上市のキャンプ場(こうじびら山の家)、千葉県柏市のJR柏駅東口(ダブルデッキ直結スカイプラザ敷地内スペース)を会場として上演。
各上演は、従来よりAAPAが狙いとしている、普段は舞台に触れることのない人との接点を作り出すことを意図した「劇場外(日常の場所)」での空間構成と、作品の東京近郊での生活感を表す美術・音・言葉・行為に加えて、会場となるその場所特有の風景が重なることを意図して演出をした。
AAPAは2006年の夏に、横浜市が昭和3年竣工の歴史的建造物を創造活動用に整備した「ZAIM(旧関東財務局)」に拠点利用団体として入居し、新たな活動を開始。
そして2007年の春に、 ZAIM本館屋上から臨む都市の姿、横浜公園の森、開放的な空を借景する、フラットな野外舞台として『関内デック』を企画・設計。地上15mの高さに位置する屋上から臨む現実の景色に、ダンス作品の状景が合わさることで、新旧渾然が一体となった「温度差のある」風景を描くことを意図した。舞台は、奥に行くにつれて間隔が狭くなるように設置したスリット状のライトのラインにより、遠近感を強調し、夜空の星を反射したようにLEDが点在して埋め込まれている舞台床面は、舞台奥に設けられた水を張ったエリアなどの仕掛けにより、周囲に広がる街並みや空の光景を、鮮やかに映し出す。
日常空間である公園で利用される休憩場(レストハウス)と、非日常的な利用形式としての舞台空間を並列させ、生活空間の中に溶け込む劇場空間の創造を意識し実施した。
ガラス張りのレストハウスは、建物内外から「覗く」行為を誘い、特徴的なコミュニケーションを生み出す。この様子を「箱庭空間」の形式に見立て、タイル張りの無機質で冷たい印象だったレストハウスのラウンジ内に、モジュール・可動式の様々な大きさ・高さの木の箱(合計164個)を設置した。これらが用途に合わせて移動・組み替えが行われることで、休憩スペースから展示・舞台空間の構成まで対応し、あわせて木の質感や人々の様々な動線が空間に加わることで、場に新たな熱気を生み出すことを意図した。
2004年の夏、AAPAの最初の活動として、神奈川県茅ヶ崎市の海水浴場「サザンビーチちがさき」において、湘南の象徴である烏帽子岩を背景に、仮設式の海の家であると同時に小劇場として機能する『茅ヶ崎戯曲』を建築家との協働で企画・建設し、ダンスと朗読劇の上演を行った。
『茅ヶ崎戯曲』では、ファサードの可動式開閉パネルが劇場幕の役割を果たし、建物内部を客席、建物外部の海岸全体を舞台とすることで、自然と一体化した劇場空間を作り出すことを意図した。また、劇場使用時以外には、従来型の海の家と同様に休憩所・売店として機能することで、海水浴場で通常行われる行動様式に添う形となることを意識し、周囲と調和しながら、日常の生活環境を「ここから離れた場所(Away)」へと誘うことを、狙った。